初冬の桧原越で三国山から槇尾山

平成13年12月 9日(日)
天候: 曇り時々晴れ
同行: 別掲
粉河寺から槇尾寺への巡礼道、桧原越のフカフカの
落ち葉に包まれた三十丁地蔵の石仏(千本杉峠)


 12/8は低徘派の忘年オフの日。大和葛城山の高原ロッジに一泊して、鴨鍋に舌鼓を
打ってワイワイ盛り上がろうという趣向。

 当日は午後1時にロープウェイの登山口駅に集合。ジョウモンノ谷コースで登り、山頂
の三角点での記念撮影、展望を愉しんで午後三時にロッジ着。芳村さん、ゲストの藤田さ
んの目の毒で且つ垂涎のスライド上映とお話、クイズ、二次会など盛り沢山の趣向に鴨鍋
と相まって、翌日のミニオフの為にセーブする積もりが、何時の間にやら超満腹、超飲み
過ぎ状態であった。いかん!とサルでも出来る反省をする。

 宴も明けた翌日。枕が変わると寝られぬ因果な性分で、ウトウトしただけの眠い目を擦
って、ごそごそと7時過ぎ布団から出る。朝食を終えて、ミニオフ参加者共々お先にロッ
ジを後にした。ご挨拶できなかった皆さん済みません。m(_ _)m

 急速に湧きだした乳色のガスが目の前を流れる。深夜には小雪もちらついたらしいが、
耳がちぎれる程の寒さはまだ。冴え冴えとした空気が、鍋の余韻の残った体には却って心
地よい位だ。

 8:36始発のロープウェイで下山。車に分乗して、まずは今回のミニオフの下山口で
ある槇尾寺へ出発。途中、コンビニで食料を仕入れたり等で手間取り、やや遅れて10時
半、参道口の駐車場に到着。ここに車2台をデポし、残りの2台の車でR480を南下、
出発点の七越峠へあらためて向かう。

 R480は数年前、根来寺からの帰りに利用した事があるが、父鬼から府県境までは国
道とは名ばかりの狭い道が続く。その為か利用車も少ないようだ。途中にある父鬼は山間
にしては大きな集落で、何でも魚屋が3軒あるんだそうな。その名前の由来等含めて集落
の成り立ちも知りたいものだ。

 父鬼を過ぎると、これから登る三国山がようやく間近に迫ってくる。暗い人工林の中を
すれ違いもままならない道が葛籠おれで高度を上げていく。登り着いた府県境の鍋谷峠の
標高はもう800m近く。ここで、国交省の航空路監視レーダ施設の取付道路にもなって
いる林道へ左折する。

 舗装されたいい道が伸びる。ほぼ水平に経塚山の山腹の南を抜けると分岐に出る。七越
峠である。七越峠は紀州と泉州を結ぶ重要な生活路であったと同時に、父鬼や槇尾寺と粉
河寺、堀越観音を結ぶ西国巡礼道の要であった峠。記念碑によれば、江戸時代から茶店が
あったとのことであるが、交通手段の変化で昭和の初めに消えたようだ。当初の予定では、
ここに車を止める手はずだったのだが、既に数台の車と焚き火にあたる人間、それに犬で
満杯状態。ハンターの一行である。峠の地蔵さんもちゃんと立っていたのだが、これじゃ
仕様がない。帰路にカメラに収めることにして先へ進み、宿山の対空受信所施設の前に数
台の車が止められる広場があったので駐車させて貰う。

 全員準備を整え林道を東へ向かう。周囲は人工林。風はそれ程ではないが、やはり寒い。
葛城山では2℃だったが、ここも似たようなものだろう。十歩も歩かぬうちに左手に祠が
あった。広場には確か大宮神社所有と立て札があったからこれがその神社だろうか。

 概ね左手は雑木に覆われた高みがうねうねと盛り上がっており、その中に踏み跡が見え
たので、林道を離れそちらへ行くことにする。イバラ、ツツジなどの雑木の細い枝が張り
だしてやや歩き難いが、葉を落とした木々の間から大阪方面がうっすらと。左に見える高
みは経塚山だろう。ふと見た枝には三国山のプレートが1枚架かっていたが、頂上はここ
じゃないのにと少し不思議だ。

 まもなく前方左方向に白亜の巨大なドームが見えてくる。国交省大阪航空局の航空路監
視レーダ施設。建物の廊下と思われる辺りの天井に、蛍光灯の灯りが見えたので無人では
なさそうだ。交代勤務だろうが、何もないところだ。さぞや大変だろう。

 再び舗装路へ出る。暫くすると左手の人工林の下草は一面の美しいクマザサである。な
だらかなスロープに踏み跡があり、三角点を求めて登ることにする。

檜林の中の綺麗なクマザサの原を行く(三国山)

 桧の幹の間の密生した丈の低いクマザサの原を分けていくと、やがてこんもりとした三
国山の頂上。綺麗な三等三角点と数枚の山名プレートが立木にひっかけてある。展望はほ
とんど無いが清々しい感じの頂上だ。

 暫く憩って再び東へ。対空送信所を右に見ながら、緩い尾根上の笹原を降りてまた車道
に出ると、通称『セト』と呼ばれる展望地へ飛び出す。南東方面が開けてこれがまた良い
景色。褐色のカヤト原が虎刈りに見える岩湧山と、深い千石谷を挟んで右の南葛城山が大
きい。右手には神野山や灯明岳。

三国山のセトから見る岩湧山(左)と南葛城山(右)

 ここには近畿自然歩道の道標が立つ。そして分岐点でもあり、右手にグンと降れば御光
滝を経て滝畑へ。左の人工林の中は『牛坂』と呼ばれる槇尾寺への巡礼道である。今回は
ここを左にとる。千本杉峠へは1.2q、槇尾山4.7q。

 よく手入れされ下草も少ない杉桧の美林の中に幅広の道が降っている。アクセントはツ
ルリンドウのルビー色の実やミヤマシキミの赤い実。

 前方で石仏発見の声が上がる。50p程のお地蔵さんで光背に三十五丁と彫られている。
誰が寄進したのかうーん素朴ないい顔だ。次に現れた石仏も柔和な顔。「右まきのを、左
ちちおに」とある。これ以降、要所には丁石仏が置かれ、古い巡礼道の面影が髣髴として
くる。

 総じて巡礼道は尾根の上につけられていて、それが広くなったり細くなったり。右手に
大きくカーブする頃には、人工林を抜け出して雑木の明るい山道になった。ここからが今
日のハイライトの桧原越え。所々に置かれた石仏を眺めながら、ほぼ水平の道は清々しい
遊歩道である。のっけが850mだったから後は降るのみという極楽?山歩。「こんなん
でええのかいな?」(笑)右にちらちらと顔を出す岩湧山はなかなかの鋭峰。今さっき越
えてきた杉桧林の山はもう背後に遠く高い。
三十三丁石仏。右、まきのを 左、ちちおに

 千本杉峠に出る。南から滝畑からのいい道が上がってきている。丁度、低徘メンバの
甲斐さんに似た若い男性が登ってきたところであった。

 更に進むと左側に大阪方面が広がるビューポイント。ゴルフ場、阪和道、堺、泉大津辺
りの石油タンク群、大阪湾に浮かぶ船。遠く神戸方面やその奥の六甲も霞む。先行のパー
ティが陣取って、この景色を肴に宴酣?である。12時ジャストでもあり、こちらも50
m程場所をずらして食事タイムとした。この辺り、丁度、清水の滝へ降る地蔵谷への分岐
でもあった。
 
 30分程のランチタイムを終えて午後の部の山歩開始。程なく右手に現れたテープのあ
る踏み跡は上山分岐の様だ。三角点ハントに一寸寄り道したいが、また今度。(^^;

 ようやく道幅が狭まってくるが、昔から良く踏まれた道でU字型に窪んでいる。周囲は
アカマツを主体としてリョウブ、ツツジ、ヤブツバキ等が混在した雑木林。要所にある和
泉市消防本部の標識を案内に進む。しかし台風の影響か、害虫の仕業か倒木が多く荒れた
印象がある。松林の中に十五丁石仏を見て、小刻みなアップダウンを繰り返すと、槇尾山
と側川方面の分岐。清水の滝に寄ろうということで左を採る。

 暫く進んで再び三つ辻。ややほの暗い感じは天候の所為ばかりでもない。清水の滝へは
側川方面へ『トラ尾』と呼ばれる尾根筋をずんずん降る。こりゃ登り返すのは少し大変そ
う。結局20分程も降ったろうか。一旦聞こえた水音が聞こえなくなって暫くして降り立
った猫の額ほどの広場が五つ辻であった。確かに側川、青少年の家へ等、五つの道が合流
していて、今にも倒れそうな朽ちかけの木の鳥居が立っている。清水の滝への道に向かっ
て立っていたから、滝をご神体に見立てたものに違いない。

 ところでその清水の滝への道は、今までとはうって変わってスリル満点である。根来谷
を形成する山腹沿いの桟道風のコースで、アルミ梯子で補強はしてあるものの、腐った板
の木橋やトラロープを垂らした道というより崖のような部分もある。極めつけは滝壷際へ
渡る部分。窪みや出っ張りが濡れてしかも苔混じりで滑る。落ちれば怪我は免れないとこ
ろ。ロープがなければ通過は難しい。少し緊張する。エアリアマップにも危険注意の赤文
字があったが、流石に油断は出来ないコース。逆に面白いコースでもある。

 清水の滝は3段40m程の滝で、細いが飛沫を散らさず纏まって白い帯の如く水が落下
する感じの滝である。上部にトラロープがある所を見ると遡行コースでもあるらしい。滝
に向かって左手に廊下状の谷があったので、そこから遡上出来るのかも知れない。
 
清水の滝

 来た道を五つ辻に戻る。当初は登り返して槇尾寺へも寄るつもりであったが、shig
aさんから下山に1時間半は必要との言葉。それに出発時間が少し遅れたことや、横浜へ
帰るメンバーもいることとて、このまま根来谷を降る事に多数決。というのは一寸ばかり
言い訳がましいかも? (^^ゝ

 途中、道が直角に折れた所に根来谷の源流になる水場がある。ここからは根来谷につけ
られた、人工林の中の林道となる。伏流していた水が現れ、谷川らしくなれば、左手に民
家が現れ、橋を渡った所は公園口バス停脇の真新しいトイレのある駐車場の広場であった。

 槇尾山付近一帯の案内図がある。尾根コースあり、谷コースあり。更にアプローチとし
て滝畑、父鬼、側川、果ては和歌山県等。バラエティに富むコースが組めそうだ。槇尾山
に近づくに従い、犬を連れて歩いている人や空身の人達も多かったから、このことからも
地元に愛されている山だということが分かる。

 トイレ休憩の後、料理旅館を左に見て、もう一つ上の駐車場に上がり、デポしておいた
車で再び出発点の宿山のレーダー受信所へと戻る。

 これで今日の野外での宴も無事終了。車を置いた広場で解散となり、各自帰途につく。
しかし小生には最後の仕事が...。(^^;;

 七越峠には未だハンターがたむろしていた。しかし折角の折りだ。車を降りて近づくと、
オレンジ色のベストを着たハンターの警戒するような目。峠の地蔵さんをデジカメに収め
るのだというと、年かさのおじさんがこっちに由来を書いた石碑があると教えてくれた。
軽四輪の荷台には犬の入った檻。収穫はなかったそうだから、辺りのイノシシ君、無事に
虎口から逃れた様子であった。
七越峠のお地蔵さん。錫杖を持ち、「右
まきのを、左 さいかみち」とある

 こんな苦労?をして撮った峠の石仏。その柔らかな顔で幾多の善男善女を見てきた事だ
ろう。その面前に殺生をする人々が屯しているのも何か皮肉ではある。

 何はともあれ、最後の仕事?も無事終えて撤収。二日続いたオフもこれで無事終了。頗
る充実した2日間でありました。ミニオフ参加の皆さん、有り難うございました。次は忘
年カラオケ街オフです。

【備考】  桧原越に点在する丁石地蔵、七越峠の地蔵仏のいずれも、舟形光背の上部に
      種子が彫られています。地蔵菩薩は通常「イ」ですが、何故か六地蔵の一つ
      金剛幢地蔵の種子の「カ」でした。



【参加者】 呉春さん、つむぎさん、のりかさん、もぐもぐさん、水谷さん、shigaさ
      ん[五十音順]

【タイムチャート】
8:44葛城ロープウェイ登山口駅
10:30槇尾寺参道口駐車場
10:55〜11:00宿山対空受信所前の広場(Ca850m)
11:15〜11:20三国山(885.7m 三等三角点 点名『父鬼』)
11:23〜11:24東の展望地
11:25セト
11:47千本杉峠
12:00〜12:30地蔵谷分岐(昼食)
12:45上山分岐
12:58十五丁石仏
13:10側川(清水の滝)分岐
13:15施福寺分岐
13:35〜13:37五つ辻
14:00清水(きよず)の滝
14:15五つ辻
14:39林道根来谷線・公園口バス停脇のトイレ横
14:55槇尾寺参道口駐車場



三国山のデータ
【所在地】大阪府和泉市・河内長野市・和歌山県伊都郡かつらぎ町
【標高】885.7m(三等三角点)
【備考】 和泉山脈主脈上の一峰で、和泉、河内、紀伊の三国の境
に位置します。西国札所の粉河寺と槇尾寺を結ぶ古道が
走り、今は現代の道である航空機の進路を監視するレー
ダーが設置されています。このレーダの白亜の建物のお
陰でどこからも同定ができます。
【参考】 2.5万図『内畑』、『岩湧山』
エアリアマップ『紀泉高原』



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