JR福知山線廃線跡〜枕木踏んでスタンバイ・ミー

平成13年10月27日(土)
天候: 晴れ一時曇り
同行: 三女朋加、飼犬チェリー
溝滝尾トンネルから第二武庫川橋梁を見る。右に天狗岩


 日曜日は播磨でオフ。参加の予定だったのだが、残念な事に予報は生憎の雨模様。それ
じゃ晴天の今日の内にどこか行かねば。しかし今日は子守の約束。(^_^;)  そこで子供
も行けるお手軽な所は何処と頭は急遽、サーチモード。折良く浮かんだのはJRの旧福知
山線廃線跡。懐中電灯持ってトンネル探検出来るし、
犬も行くよと四歳の三女を誘って連れ出しました。(^^)/

 この廃線跡、JR生瀬駅から武田尾駅迄、約6qの道のりであるが、ほとんど高低差も
なく、横を流れる武庫川の向こう岸は「壁岩(べっとう)」と呼ばれる迫力のある岩壁。
意外な渓谷美も堪能出来て、拾い物の半日となりました。

 12時丁度、家を出てR176を宝塚へ。途中、例の如くコンビニで飲食物を仕入れ、
三女には「キョロちゃん」。まだまだこんな菓子や「ジャガリコ」が連れ出すのに大きな
威力を発揮するのだ。(^^ゞ

 西宮市生瀬を抜け、大多田橋の信号を左折して有馬街道に入ったとば口、川沿いの路肩
が広まった辺りに車を止めて準備。今日は山歩きでもないので運動靴。懐中電灯を二個取
り出して早速出発。

 R176と有馬街道の分岐には木之元地蔵の道しるべ。木之元地蔵といえば滋賀の湖北
が有名だが、何か関連があるのか否か又いずれ。

 R176に戻ると、たもとに祠。中には馬頭観音の石仏。この付近の武庫川は「米が淵」
と呼ばれ、丹波から米を運ぶ際、ここで一文銭を投げ、沈んだ銭が表なら堂島の米相場が
上がり、裏なら下がると占ったそうだから、米を運ぶ牛馬の労をねぎらって立てられたの
かも知れない。今も花が供えられ、近所の人々の奥床しさと当時の賑わいが偲ばれる。

 さて、大型トラックなどの通行が激しいR176を北上していくと、左手の土手が無く
なって、何やら看板が立てられている(写真)。JRが立てた注意喚起の看板で、ここが
廃線跡への生瀬側の入口。ススキが両側から生い茂った中に線路跡が白い地道となって延
びて行く。すぐに中国道の高架下。R176の下を小さなトンネル。これを潜って廃線跡
ハイクは始まる。

廃線跡入口にあったJRの注意書き

 右手には人家と田圃。左手は雑木林。踏切跡と思しき所もあって面白い。ヤクシソウだ
ろうか、黄色い花が満開。やがて、右から武庫川が近づいてきて、廃線跡はこれから先、
川に沿う事になる。

 しばらく歩くと、おばさんが道の真ん中で食事中。聞けば懐中電灯を忘れたそうな。同
行を頼まれる。「廃線跡歩くにゃ傘忘れても灯りを忘れるな」ですよ。(笑)

 鉄橋が見えてきた。「5人以上同時に渡るな」の注意書きがある。HPに良く写真が掲
載されている名塩川に架かる鉄橋で、下は「出合淵」。大きな岩が転がっており、水が白
い飛沫を上げていてなかなかの迫力である。鉄橋に敷き詰めてある鉄板に上がれるので、
折角だからここで記念撮影しておく。

名塩川合流点にある出合淵の上の橋梁で記念撮影

 道に枕木が現れた。バラストもある。信号機があったと思われる設備跡もある。草むら
に埋もれて距離標まで残っていた。鉄道マニアにはこたえられないだろうなぁ。

草に埋もれて残っていた距離標識。数字は起点の
大阪からの距離

 高座岩、見張り岩などの案内板が出ている辺り、武庫川の左岸の崖に、黒い鉄パイプで
作られた建造物が目に入った。と、署名お願いのおじさんがいる。聞くと武庫川ダム建設
反対の署名だという。署名しながら例の建造物の事を尋ねると、国土交通省のダム調査の
為の足場なのだそうだ。表面上、計画凍結となってはいるものの再開が怖いと語るおじさ
んでした。

 最初のトンネルが現れた。北山第一トンネル(318m)。本当に真っ暗。でも朋加は
臆することもなく懐中電灯を持って突入。おお?意外に怖がらんなぁ。

生瀬側から最初のトンネルの北山第一トンネル
中は真っ暗で懐中電灯必携

 戦前に掘られた煉瓦造りのトンネル。枕木がそのままなので躓くと危ない。所々、水た
まり。天井から地下水が垂れているのだ。ヒョッと肩に当たる。冷たい。前方に出口の灯
りが見えると何故か「ほっ。」外光が眩しい。

 右下を流れる武庫川は淵と瀬が交互に現れる。激しい水音が消えたと思えば青黒い淵。
「あかたの瀬」、「長瀞淵」、「清水ヶ淵」、「十国の瀬」。

 このコース最長のトンネルは次に現れる北山第二トンネル全長413m。文字通り暗黒
の世界。しかも途中で曲がっているので出口が見えない。一寸スリルがある。

 漸く抜け出た辺りは「ナマズヶ淵」というそうだ。宝暦8年、名塩の教行寺の普請に用
いる為材木を流したところ、この淵で流れなくなり、重次郎なる若者が飛び込んで力を尽
くした甲斐あって流すことが出来たのだが、若者はついに上がってこなかった云々という
悲しい話が残っているのだとか。左手に小さな沢があって水場になっている。旨い水なの
で飼い犬にも相伴させる。

 「溝滝」は別名「鮎止めの滝」。雌雄二滝があって、溝の如く削られた岩の間を豊かな
水流が轟々と音を立てて豪快に流れる。当渓谷随一の激流で、加古川の闘竜灘と同じく、
ここで遡上する鮎を捕ったという。

 百畳岩を見て、再びトンネル(溝滝尾トンネル)。今度は149mと短いが、出口直ぐ
が第二武庫川橋梁で当コースのハイライトといっても過言ではない。鉄橋は側道を通るよ
うになっているが、川面まではかなりの高さがある。鉄橋にはレールはないが、枕木はそ
のまま。スピルバーグの映画「スタンバイミー」の世界にスリップした感じである。小生
らはこの雰囲気を楽しむべく鉄橋の手前で、テラス状の天狗岩を見ながら一息入れた。

 鉄橋を渡るとまたトンネル(長尾山第一トンネル 307m)。これを抜けるともう武
田尾は近い。廃線跡は遊歩道然としてきて、平たい石がベンチの様に置かれた展望広場に
出る。ベンチに座ってミカンを食べながら、歩いてきた方向や武田尾方面を眺める。

展望広場より武田尾方面を見る。黄葉にはやや早い様だ

 親水公園との分岐には武田尾まで1.6qの標識がある。記念碑も建てられ、綺麗に整
備されていて「桜の園」の入口でもある。「桜の園」は水上勉の「櫻守」のモデル笹部新
太郎氏の亦楽山荘があった所。当時は福知山線のトンネルを伝って山荘へ出入りしていた
のだとか。今は遊歩道もあって、北摂大峰山への登山口でもある。大峰山には十万辻から
歩いたことがあるが、次回はこちらから駈渡山とセットで歩いてみたいものだ。
 
 「櫻守」の主人公も歩いたトンネルを2つ抜ける。(長尾山第二(147m)長尾山第
三(91m))抜けた所は芝生の広場。ザックを置いて、長尾淵でしばらく石投げ遊び。
そして僧(ぼうさん)川を渡れば武田尾の集落であった。

 ところで、廃線跡はこの続きどうなっているのだろうか?武田尾付近ではそのまま道路
に変わったように思えるが。はてさて...。

 赤い橋が架かっていて渡って西へ行けば武田尾温泉。日帰り温泉も可能だが、今日はコ
ブ付き?なので入浴は又今度。実は大人千円と高いこともあるのですが...。(^^;)

 古い茶店などがある旧道をぶらぶら歩くとJR武田尾駅はすぐ。生瀬まで大人180円。
その時、ふと或る事に気づく。犬は大丈夫なんだろうか。ザックに入れて運ぶがと駅員に
尋ねると、OKという返事。が、喜んだのも束の間、犬は手廻り品と見なされてなんと2
70円也。人間より高い乗車賃が要る不埒?な犬です。(笑)

 武田尾駅は大部分がトンネルの中という変わった駅。ちょうど滑り込んできた16:0
4発の京都行き普通に乗車、生瀬でくだんのおばさんと別れる。

 少しアカネ色に染まりだした空には鱗雲。どこからかキンモクセイの香り。秋本番。そ
れにしても三女も犬も良く歩きました。ファミリーハイクに最適の福知山線廃線跡でした。


■追記 「桜の園」から武田尾を歩いたこともあって、あらためて「櫻守」を読み返して
    います。実際に歩いたことで、描写されている地形などはその通りであることが
    分かります。また主人公の妻「園」の生地、切畑という在所も出てきますが、こ
    こも歩いたことがあり何か懐かしい思いです。
 
【タイムチャート】
12:00自宅発
12:45〜12:50R176・有馬街道分岐付近(駐車地)
13:05福知山線廃線跡入口
13:15〜13:20名塩川出合淵
13:25高座岩
13:45長瀞淵
14:05最長トンネル(413m)出口
14:15溝滝
14:26〜14:40天狗岩(第二武庫川橋梁手前)
14:53〜15:06展望広場
15:10〜15:15花の園入口
15:31〜15:35長尾淵手前の芝生広場
15:50JR武田尾駅



福知山線廃線跡のデータ
【所在地】 兵庫県宝塚市・西宮市・神戸市
【標高】  100〜120m
【備考】  新線の付け替えで、昭和61年、その使命を終えた旧J
      R福知山線の路線の内、生瀬駅から武田尾駅間の廃線跡
      を利用したハイキング道です。高低差がほとんどなく、
      家族連れで楽しめます。武庫川の渓谷美を鑑賞しながら、
      春は桜博士と呼ばれた笹部新太郎氏の亦楽山荘周辺の『
      桜の園』の桜、秋の紅葉と四季楽しめます。また、武田
      尾には温泉が湧き、日帰り入浴もOKです。
      尚、JRは廃線跡の整備を行っていません。鉄橋や崖か
      らの落下事故等は自己責任となります。
【参考】  昭文社エアリアマップ『北摂の山々』



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