五台山〜丹波の春は麗らかに

平成13年 4月 8日(日)  
天候: 晴れ
同行: 単独
満開の桜を従えて五台山遠景


 帯状高気圧が広く日本を覆っているのだという。安定した晴天が見込まれる週末、久々
に丹波に遠征?してみた。おかげで汗ばむほどの陽気に、麗らかな春を迎えた長閑な丹波
路を満喫することが出来ました。

 8時過ぎに出発。最寄りのコンビニで食料を仕入れて宝塚方面に向かう。絶好の花見日
和に混雑を予想したが、意外にスムーズ。R176のバイパスから見ても中国道はスイス
イ。宝塚から高速道に入ったが予想より早く着きそうなので、高速料金を浮かす為、丹南
篠山ICで降り一般道に出る。(^_^ゝ 途中の鐘が坂公園の桜が満開。期せずして花見を
しながらのドライブとなった。
 
 坂を下ると織田氏ゆかりの城下町、柏原町。進むに従って、右に見覚えのある向山連山。
左には高見城山、前方に安全山が見えてくる。達身寺のある氷上町清住方向への曲がり角
にはカタクリ祭の幟が揺らめいている。今日も沢山の観光客で賑わうことだろう。

 独鈷の滝を示す大きな標識に従って右折する。香良の集落の奥に五台山の大きな姿が現
れてくる。

 岩瀧寺川を遡って行き、蛾々たる山肌と鬱蒼とした杉林が迫ってきたところで左に駐車
場。3台の先着車が止まっている。数年前に来た時より整備が進んでいるようだ。白玉大
明神の祠横には立派な案内板がある。五台山には香良からは2km、鴨阪からは2.6k
mだそうだ。「ん?」ということは2kmで500mの標高差かぁ。かなりの急登があり
そうな予感。(^^;

 東屋と綺麗なトイレを横に見て、岩瀧寺渓谷沿いに奥へ入る。享保年間建立の石仏や、
「なにとなふ こころも涼し 飛泉の音」の句碑などがあり、ゴミもほとんど無い清々し
い所だ。右手に岩瀧寺の建物を眺めてすぐ、前方に石段が見え、段上に古い建物がある。

 次第に水音が高まってくると、左奥に独鈷の滝が姿を現わす。白布を垂らしたような1
5m程の優美な滝で、若葉の頃も良いが、紅葉の頃は格別の風情であろう。

 滝を見つつ、50段程の石段を登った先が浅山不動尊。剣豪浅山一伝斉修行の地だそう
だ。覗くと大きな岩の裂け目に不動明王が祀られている。祠の屋根を保護する金属板に水
滴が滴る音が反響して不気味。更に、祠の前に「眼球寄進」とあるのを発見して尚、吃驚。
何のことはない不動明王の目玉のことだったのだが、それにしても人騒がせな寄進である
ことよ。

 さて、登山道はここから左に曲がって露岩の間を行く。頂上まで2231mの標識。す
ぐに鷹取山へ直登する踏み跡の分岐と市島町美和峠古道の分岐が次々に現れる。

 やがて左は断崖となり、路肩に危険を示す赤旗が立てられているが、その横に見覚えの
黄色いツツジ。ヒカゲツツジである。数株が崖にへばりついており、数輪の花が風に揺れ
ている。早速、撮影モードに。
独鈷の滝の上の崖に咲いたヒカゲツツジ

 次に現れた不二の滝は20m位の岩を滑る滝。これもなかなか優美な滝で、ここから暫
くは、崖につけられた1m幅のいい道。やや盛りを過ぎたピンクのショウジョウバカマが
一輪。

 暫くすると「藤の目」、「牛の首」という標識が木にぶら下がり水流が分岐する場所に
出て、直進は市島町前山へ到る峠道。これが不動尊の所に立っていた石碑に彫られていた
大正元年に開削された道らしい。確か、碑には大意「牛の首坂は大切な道だが、険阻なの
で改修」云々とあったなぁ。

 五台山への道は、丸木橋を渡って左の藤の目渓谷沿いに登っていく。途中、何度か沢を
横切る。その間、岩を滑る細流が滝とも云えぬ小瀑を作り、たてる水音が涼しい。左に荒
々しい岩の割れ目があったので、覗いてみれば古い梯子の残骸があるのみであった。

 「五台山を愛する仲間」という会が設置した真新しい鹿ネットが張られた所から、道は
沢を離れて右の山腹を高捲いて行く。やがて現れたのが「一つ岩」。岩の手前に「幸世村
直営地界」と刻まれた石標が立つ。今は氷上町に合併された村のようだ。額を流れる汗を
拭き拭き、ここで小休止。

 再び左の沢が近づいてきた。ここまで来るとほとんど流れはない。道はこれを横切って
今度は左の山腹に取り付き、桧の植林帯を直上する様になる。疲れるなぁと思う頃にあと
千mの標識。心憎い演出?だ。

 道が山腹に平行する様になると、まもなく小さな尾根の突端に飛び出した。周囲は植林
帯から松の林に変わって明るくなり、地面には分厚い松葉のクッション。「小峠」と標識
があり、ようやく木々の間から下界が見下ろせるようになる。ここには南に降る道があっ
て、イリズミ谷から病院裏に出るが険しいと手書きされていた。

 明るい松の尾根道から再び植林帯へ。これがまたジグザグながら厳しい登り。左に尾根
を直登する踏み跡を見送って山腹を捲きながら進む。

 ふうふう荒い息を吐きながら体を持ち上げて行くと、前方に大きな岩が出現。これを見
てすぐ、尾根のたわみに乗り上げた。小野寺山と五台山を結ぶ稜線で、日本海と太平洋を
区切る分水界でもある。どっちに行こうか?とりあえず小野寺山へ向かってみる。

 概ね市島町側は雑木、氷上町側は植林帯と分かれた稜線上に小広い道。アセビの大木も
多い。更にシャクナゲが現れたが、これはどうも人為的に植えられたようだ。そして左右
を覆っていた木々が途切れて、ポッカリ空いた空間が、誰もいない小野寺山の山頂であっ
た。
小野寺山(尾の寺山)から眺める五台山。奥は
千が峰方面の山並み

 三角点はないが、「幸世村直営地界」の石標がここにもある。そしてなかなか素晴らし
い景観が迎えてくれる。今までが木々の中の展望皆無と云っていい道であったから尚更、
その印象が深い。山頂中央に設置してある鳥瞰図盤と見比べつつ山座同定。南にタムシバ
に飾られた五大山から鷹取山の稜線。多紀アルプスも全容を見せる。東には市島町の集落
と親不知の大きな山容。西側直下は香良の集落。加古川の流れと生野方面に連なる山々。
澄んでいれば六甲も見えるというが、今日も霞んでいるとはいえ、まずまずの視界の伸び
である。
 
 その展望を独り占めしていると鞍部から単独小父さんが上がってきたので交代し、五台
山へ向かうことにする。

 桧林をゆるゆる登って5分ほどで山頂。数組のベンチと南側には丸太で作った簡易展望
台まであり、大きな文殊菩薩の石像横に立派な二等三角点が鎮まっていた。

五台山山頂の文殊菩薩石像

 ところでこちらは小野寺山とはうって変わって、数組の先着パーティが食事の最中とあ
って賑やか。当方も丁度空いていたベンチを占領して食事の用意を始める。

 こちらもなかなかの大展望である。ほぼ全方位のパノラマ。湯を沸かす間や、食後のコ
ーヒー片手に双眼鏡で堪能する。北西に粟鹿山と大箕山、その右は大江山らしい。北には
遠く三岳山や可愛い姫髪山。南は多紀アルプスに白髪岳と松尾山。とんがり山に西光寺山。
双眼鏡で確認すると、西が岳の肩に深山迄が望見できる。西には高見城山や岩屋山。千が
峰に連なる峰も屏風のように連なっていた。
 
五台山山頂から箱庭のような香良の集落を望む

 気がつけば1時間以上も山頂に。帰りは鴨内峠経由も考えたが香良まで戻るのが長そう。
しかも何か忘れてきたなぁと思えば、それはコンパス。風呂にも行きたしで結局、断念し
てピストンする事にする。(^^;

 往路では出会わなかった登山者に復路ではパラパラと出会いながら、独鈷の滝まで戻る
と、朝には開いていなかったミヤマカタバミの白い花が岩肌を飾っている。ユキノシタ科
の植物もあったから、初夏の季節も石垣を白く彩ることだろう。

 左手に逸れて岩瀧寺に寄ってみる。真言宗大覚寺派の尼寺だそうで、浅山不動尊の裏山
の岩壁を借景に綺麗な庭があるが立入禁止。が、庫裡の前にも掃除の行き届いた庭があり、
タチツボスミレやピンクのイカリソウが満開であった。

 鐘楼と山門を兼ねた小ぶりな門を潜り、小橋を渡ると往路に合流。駐車場まではすぐ。
いつの間にか満車状態であった。

 装備を解いて車のエンジンをかけようとした時である。ワイパーに何かが挟まっている
のを発見。取り出してみると、なんと地元の低徘メンバー、丹波のたぬきさんのメモであ
る。後でメールで伺うと、30分程前に来られたらしい。五台山に登ると昨日MLにアッ
プしたが、却って気を使わせてしまったか?恐縮の限り。有り難うございました。

 柏原に出て、入浴施設の「高灯籠」で一汗流し帰路に就く。素晴らしい天候に恵まれた
今日一日。麗らかな丹波の春を満喫した一日でした。



【タイムチャート】
8:00自宅発
9:50〜9:53登山口駐車場(Ca165m)
10:03〜10:06独鈷の滝
10:38〜10:41 一つ岩
10:50小峠
11:10分水界稜線鞍部(小野寺山分岐)
11:13〜11:30小野寺山山頂(645m)
11:35〜12:45五台山山頂(654.6m 二等三角点)
13:05小峠
13:40独鈷の滝
13:45〜13:55岩瀧寺
14:00登山口駐車場



五台山のデータ
【所在地】 兵庫県氷上郡市島町・氷上町  
【標高】  654.6m(二等三角点)
【備考】  兵庫県の中央部、氷上盆地の東側に位置する丹波の名山
      です。氷上町、市島町の登路がありますが、香良からの
      道が古刹、渓流と変化に富みポピュラーです。
      最寄は JR柏原駅から神姫バスで香良口下車です。



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