ホワイトアウト?に慌てた段ヶ峰

平成13年 4月29日(日)
天候: 曇りのち雨
同行: 別掲
ガスと強い風雨に包まれて、段ヶ峰北西の鞍部を探る


 しまださんが企画した段ヶ峰裏街道オフ。播但道の西の高原地帯は私にとっては初見参
とあって、一度行ってみるかと前々日に急遽飛び入りをしたが、思わぬ天候の急転でガス
にまかれ、さながら疑似ホワイトアウトを体験するというハプニングに遭遇。初めての事
でいささか慌てたが、そこは皆さんベテラン揃い、今から思えば面白い経験をさせて頂き
ました。

 昨日までの好天続きが嘘のよう。どんよりした雲が空を覆う。案の定、宝塚を過ぎると
やや大粒の雨がフロントガラスを叩き出した。しかしすぐに上がり、ほっと胸をなで下ろ
す。予報は曇りのち雨。このまま何とか持ってくれればいいが。

 8時過ぎに集合地の道の駅「山崎」に到着。建物の裏に廻ると揖保川に色とりどりの鯉
のぼりが並んできれいであった。

 8時半、大加茂さん、佐竹さん、みやびさん、かねちゃん父子、八木さんらが揃い、第
二集合地点の上千町へ移動。一宮町百千家満(おちやま)でR427と別れ急勾配の道を
登る。大台ヶ原への道によく似た雰囲気の道で、雲海に包まれた下界がひょいと崖下に顔
を出した時は幻想的であった。

 一宮町草木は苔むした墓地にある2本のシャクナゲの古木が満開、畑の桃の花のピンク
色と相まって文字通り桃源郷の趣の集落だ。次の集落が千町。「こぶしの里」は千町ヶ峰
の登山口でもある。ここを通り過ぎると上千町。舗装が途切れて林道となる。当初はこの
右手の空き地に車を置く手筈であったが、先導の大加茂さんは更に前進、結果的に牧場跡
まで車で登ることとなった。しかしこれが後で生きることになる。

 草木川の源流沿いの広くなった路肩に車を止めて準備を整えている内に、千町峠に車を
デポしたしまださん達が到着、全員が勢揃い。しかし、本日の主催者のしまださんの腰痛
が悪化とのことで、残念ながら同行しないという。人一倍の山好きには無念であるに違い
ない。完治を祈るのみ。

 さて、一行は更に延びた林道を進む。辺りは芽出し始めたばかりの広葉樹の中に、盛り
を向かえた山桜がアクセントを与えているなだらかな地形。キャンプに最適。林道沿いに
は伐採された木もあり、兵庫県の緑の公社の立て札もあって、近々、遊歩道でも整備され
るのかもしれない。

 談笑しながら登っていく内に、右手の涸れ沢に「笠杉山・峠登り口」と書かれた尼崎山
の会の白い杭。雪で荒れた植林の間に明瞭な踏み跡があり、所々は深くえぐれている。ウ
グイスが耳を楽しませ、ミヤマカタバミやスミレが、単調なくすんだ植林の下の道に彩り
を添えてくれる。早速かねちゃんは撮影モード。

 しばらく登るとあっけなく鞍部。尼崎山の会の道標と、天保14年というから約150
年前の地蔵さんが鎮座している。いつのものか判らぬほど腐食した10円玉が供えられて
あった。デジカメ撮影したのだが、手ぶれで判然とせず。残念。

 ここから北に向かえば30分で笠杉山、直進は朝来町田路(とうじ)。我々はここから
南東に折れ、段ヶ峰の北西尾根に乗る。

 郡界尾根なので赤いプラ杭、テープも適度にあって登りよい。ムシカリの白い花が美し
い。登るに従って、背後に笠杉山から須留ヶ峰が顔を出してくる。

段が峰の北西尾根を彩っていたムシカリの花

 Ca940mピークを越えると今日一番の急登。前方にはCa1080mの台地の先端が目
の前に。一気に登ると、通常とは逆に尾根が徐々に広がってきて、丈の低いササのブッシ
ュとなる。どこからでも登れそうだが、ちゃんとテープがあってそれを辿ることにする。

Ca1080mの台地の先端へ向かって落ち葉を
踏みしめ尾根を登る

 踏み跡は徐々に南に方向転換し、生野方面の山々が顔を出し始めた。台地に乗ったよう
だ。ほとんど高低差がない。低い丈のササと松、石庭を思わせる岩組に満開のアセビ。さ
ながら自然が造形した日本庭園である。

満開のアセビの中、日本庭園を思わせる広い稜線上をCa
1080mピークから1088mピークへ向かう

 気持ちよいプロムナードをCa1080mピーク(奥段ヶ峰(仮称))へ。聞きしにまさ
る大展望である。これから向かう段ヶ峰は云うに及ばず、西に一山、北は藤無山や粟鹿山、
東には生野町の盆地などが指呼の間。南西の千町ヶ峰がとりわけ大きい。だが、一山など
の上空にはレンズ上の笠雲。藤無山はいつの間にか頂上部がすっぽりガスに隠れてしまっ
ている。こりゃ天候の悪化は予想以上に早そうだ。風向きもあまり幸先の良くない東風。
先を急ぐことにする。
Ca1080m台地から望む段ヶ峰のたおやかな稜線
この後、これがガスで隠れてしまうとは...

 所々にある町界を示すプラ杭やテープを辿って進路は南西に変わる。低いササ原には獣
道が錯綜している。予想以上に鹿が多いのだろう。至る所に糞。イヌツゲと思しき丸い低
木は新芽が粗方無くなっている。

 30m程のアップダウンを越えて1088mの標高点ピーク(西段ヶ峰(仮称))。こ
こも展望は素晴らしく、段ヶ峰から千町ヶ峰たおたかな稜線が一望。今まさに段ヶ峰頂上
に着いたパーティの人影も。遙か下の林道にしまださんの車がよく見える。あちらからも
我々が良く視認できると無線。

 そうこうしている間に、霧の粒の様な冷たい物が頬に当たりだした。雨が早足で近づい
ている。その前に食事を済まさねば。強くなった風を避けて、北西側に廻り込み、アセビ
の木を風除けにして昼食とする。

 「わっ!大きなダニやわ」と、母たぬきさんや八木さんの奥さんの声を聞きながら、湯
を沸かしている最中だったろうか。ササの葉をカサカサと叩く音。先程までの霧状の細か
い水滴が、ついに本格的な雨粒にまとまってきたようだ。と、段ヶ峰方向から乳色のガス
が速い速度で湧き上がってきて、あっという間に周囲を包んでしまった。視界は30m以
下に落ち込んでいる。さながらホワイトアウト状態。皆さん、慌ただしく食事を早めに切
り上げ、雨具を着用して段ヶ峰へと出発。

 ここからはブッシュで踏み跡も無いとの事で、今日最大の難所?なのだが、視界が悪く
次の目的地の段ヶ峰が視認できない。が、現在地が判っているので、地形図とコンパス、
GPSで方向を定め、とりあえず段ヶ峰北西側の鞍部を目指す。

 先行は土地勘のある大加茂さん。下からのしまださんの誘導も心強い。ブッシュを抜け
ると獣道の様なものがあって、更に植林帯に降っていくと意外や広い踏み跡に出くわした。
やがて平坦地になり、何とか目標の鞍部付近に到着したようだ。現在地を確かめ、再び方
向を定めて歩を進める。テープはない。はっきりした踏み跡はいつの間にか途切れたが、
幸いササのブッシュは丈が低いので助かる。と、しまださんが話していた黒い鹿除けネッ
トが出現。これで安心、「大加茂さん、流石〜。」と期せずして声が上がる。

 鹿の白骨と毛が散乱している場所を通過。ネットに角を絡ませて死んだらしい。少々可
哀想な気もするが、林業を生業とする人々にとっては食害も切実な問題であろう。

 やがて傾斜がゆるんできた。手元のGPSではぐんぐん三角点迄の距離が縮まっている。
方向もばっちり。このまま鹿除けネット沿い進めば間違いなし。その内に八木さんの「登
山道あるで」の声。見ればはっきりした正規の登山道。それを辿って行くと右側に二等三
角点があった。なんとGPSの誤差は2m。こういう悪天には強い味方だなぁと実感する。

 更に南下すると避難小屋の残骸。そして三角点の位置よりやや高い部分に、JR西日本
の登山会が立てた段が峰の標識。側で丈の低い松が風雨に耐えている。

 ここで疑問。三角点は点の記では1103.4mとある。しかし写真を見ても判るよう
に横の標識は1087m。JRの標識は1103mとあった。どれが正しいのか。国土地
理院が間違う事はあまり考えられないので、段ヶ峰は1103mより高いのかな?

生野町が設置した標識と二等三角点の標石

 風雨は強まるばかりで寒いので、一行は早々に千町峠へ下山開始。「晴れてりゃ素晴ら
いい眺めなんだがねぇ」と八木さん。うーん残念。でも西段ヶ峰や奥段ヶ峰からいい景色
見られたし、これ以上望むのは贅沢でしょう。

 千町峠への道はいわば表銀座コース。雑木の中にきれいな踏み跡が続いている。霧で景
色を愛でられず、自然、足元に目がいく。生々しい爪がなぜかまだ付いたままの鹿の白骨
化した脚。これで都合3頭目の死骸だ。ショウジョウバカマの紫の花、キランソウの紫の
花。色々なものが視界に入ってくる。これもまた楽し。

 檜林が現れれば千町峠はすぐだという。やがて車の音が聞こえ、悠々山荘の増築工事の
横を、山頂から20分程でしまださんの待つ峠に降り立った。

霧の中、しまださんの待つ千町峠へと急ぐ

 千町峠は道が広げられ周囲も造成されていて峠の感じはない。石仏もないそうで愛想のな
い峠ではある。雨で汚れた足元に恐縮しつつ、ここでデポされたしまださん、たぬきさん、
dameちゃんの車に分乗、上千町のミズナラの古木の横から往路に合流、14時過ぎ、再
び駐車地に戻ったのであった。

 雨は上がり加減。なんと気まぐれと思うが、山崎町に戻った時には再び本降りだったから
まあ良しとせねば。さらに大加茂さんが牧場跡までの先導がなければ、1088mピーク着
が30分は遅れたであろうから、食事もおぼつかなかったであろう。開催も危ぶまれたオフ
が無事終了できたのだから大成功の部類である。三方町のサンパティオで解散後、山崎町の
生谷温泉に寄り道して帰途につく。主催のしまださん、そして、同行の皆さん有り難うござ
いました。



■同行: 大加茂さん、かねちゃん父子(俊一君)、佐竹さん、しまださん
     たぬきさん夫婦、dameちゃん、みやびさん、八木さん夫婦(五十音順)

【タイムチャート】
6:40自宅発
8:10〜8:30道の駅「山崎」
9:25〜9:45上千町奥の林道終点手前(Ca740m)
10:00笠杉山・峠登り口
10:11〜10:16峠(笠杉山登山道分岐)
10:37〜10:41小休止
11:17〜11:25Ca1080mピーク(奥段ヶ峰)
11:36〜12:101088mピーク(西段ヶ峰)昼食
12:25段ヶ峰北西の鞍部
12:52〜12:55段ヶ峰山頂(1103.4m 二等三角点)
12:56段ヶ峰最高点
13:17〜13:30千町峠
14:05上千町奥の林道終点手前(Ca740m)



ヶ峰のデータ
【所在地】 兵庫県宍粟郡一宮町
【標高】  1103.4m(二等三角点)
【備考】  JR播但線西部にあって、フトウガ峰、千町ヶ峰と並ん
      で生野高原を形成しています。山頂はササと灌木が茂る
      だけの為、360度の大展望が得られます。高低差のあ
      まりない地形なので、霧、ガスが発生した際の用心の為、
      コンパスと地形図の持参が無難です。
      ■近畿百名山 ■関西百名山
【参考】  2.5万図『神子畑』



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