雨上がりの芦生は生き物一杯

平成13年 6月24日(日)
天候: 雨のち曇りのち晴れ
同行: もぐさん
梅雨の晴れ間の木漏れ日に新緑輝く芦生のトロッコ道


 起床して窓外を見るとどんよりした空模様。今にも雨粒が落ちてきそうな雰囲気。現に
路面が濡れており今し方まで小雨がぱらついていた様だ。

 本来は昨日の予定が、今日の方が天候は好転するとの予報を信じて順延したのだが、一
夜明けると降水確率が悪化しており、強い雨に雷まで予想されているという。一貫性のな
い天気予報ではある。まぁ心配しても仕様がない。少々の雨でも歩ける所ということで選
んだ芦生。予定通り7時に家を出る。

 池田市に入る頃、早くもポツポツ。それがR423の伏尾を過ぎる頃には本格的な雨に
なった。次第に強くなる雨は鴻応山付近では道路が川状態。こりゃヤバイかも。単独行じ
ゃここで確実にUターンしているだろうなぁ。

 その雨も亀岡に降りる頃には小康状態となったが、いつぶり返すかも知れぬ状況に、と
りあえず、もぐさんに連絡を入れることにする。

 もぐさん、現在地、大野ダム付近。三田辺りでは土砂降りだったが、今雨は上がってい
るという。そこでこちらの走行コースを連絡し、道が合流する美山町今掛で落ち合ってか
ら、差し当たっての相談を行うこととする。

 京都縦貫道園部ICから日吉ダム横を抜ける県道へ。おっ薄日が射してきた。このまま
回復基調で推移して欲しいなと念じながら会同地点へ急ぐ。外は凄い湿気なのだろう。左
を流れる由良川から白い蒸気が湧き上がっている。

 淡々と進む内に合流点の安掛。T字路角の酒屋の前でもぐさん発見。挨拶もそこそこに
今日の予定を相談である。一旦、小康の天候も再び悪化との予報だが、折角来たんだから
行ける所まで行こうじゃないか。仲間のいる強みである。

 佐々里への府道は、所々改良され走りやすくなっている。だが落石の石が転がっている
のを見るのは気持ちのいいものではない。鮎釣り客を見ながら、府道と分かれて芦生への
生活路。無料駐車場に車を止める。

 車を降りた途端にウグイスの声が近くで。先着は今日はテント泊というカップルと、芦
生は初めてというご夫婦である。トレッキングポールは持たず、天候の悪化に供えて傘を
片手に支度を終えて出発する。

 芦生はこれで4回目。見慣れた京大演習林入口の、入山届けを入れる鬼太郎の妖怪ポス
ト?も健在で、民家の様子も変わらない。が、由良川を渡る鉄橋の両側に鉄の柵が取り付
けてある。数年前ここで、地元のナメコ組合の組合長さんが転落死されたのではなかった
か?そして、トロッコが通るので駐車禁止の立て看板。枕木もコンクリートになっている。
以前は朽ちた木のままだったように思うが...。

 湿度は確実に90%を超えているだろう。大気も土も周囲の木々も苔も含めるだけの水
分を含んでいる様子だ。しかし、自然の生物にとっては好条件。緑が生き生きとしている。
苔から滴る水滴。歩くと吃驚したように飛び跳ねるアカガエル。蛙が多いと云う事は即ち
蛇も多いということだが、幸い褐色の小さな蛇が横切ったのを一度見たのみ。不思議な事
にヒルがいないから助かる。

 だが、道を行く人間には逆にこの湿気が厄介だ。衣類は肌に貼りつくし、何より谷にか
けられたトロッコの木橋が危険。ヌメっとよく滑るのだ。崖に桟道状に架けられた箇所で
は、恥も外聞もなく四つん這いで三点確保を心懸ける。それでも後半は慣れて、つぼ足や
カニの横這いが効果的だと分かる。(^^;

 ヨウラクツツジの花が落ちている。時折、どこからかハルゼミの鳴き声。カラの仲間だ
ろうか小鳥の鳴き交わす声がする。所々には幹廻り3mはあろうかというトチノキの巨体。
流石に苔むした表面にどっしりとした風格があった。

 苔むした石垣と祠の残る灰谷の廃村跡を過ぎると、左に見える由良川の渓谷も深くなり、
水音も騒がしくなり出す。雨でやや濁った水流はいつもより多い程度だが、白い波を立て
て勢い良く流れている。

小ヨモギの作業小屋の前を通過し、しばらくした頃だろうか。もぐさんが大きなガマガ
エルを発見。なかなかの面構え。つついても逃げようとせず、頑固親父の風情がある。記
念写真を撮る。
トロッコ道の真ん中に鎮座していたガマガエル

 去年、残念ながら引き返した崩落箇所には丸太が渡してある。カニの横這いで通
過後まもなくで、大きなオニグルミの木の下に、カズラ谷の作業所の屋根が茂みに
埋もれて見えてきた。この先、カズラ谷の木橋は崩れていて通行不可。日も射して
きたので、由良川の川原で昼食とする。

 いつの間にか広がった透き通った青空から
の夏を思わせる強い陽射しを避けて、大きなエノキの木陰で、まずは持参の簡易ク
ーラーから缶ビールを取り出し乾杯!。よく冷えていて、いやぁ旨い!二人ともご
満悦。途中でよく引き返さなかったものだ。お互い晴れ男なんだと自画自賛。その
後はそれぞれの定番。もぐさんは「赤飯にぎり」でこちらは「助六」。

もぐさんのこの顔を見てやって下さい。
とりあえずビールで乾杯で〜す、お疲れさん

 食後は自然観察の時間。3年前に来た時にイモリが確かこの辺に...。と探すと同じ
所に居た居た。10cm程のよく肥えた奴が数匹。捕まえてしげしげ眺めると案外可愛い
顔をしている。赤いまだらの腹が鮮やか。黒焼きにして食べますか。誰に惚れるかな?

由良川源流にいたイモリ。意外に可愛い顔をしています

 対岸にコバイケイソウ。ここのは青々としている。こちら側には咲き遅れたウツギ。川
原の草にはウマオイ虫の幼齢らしきものや、コオロギの幼齢などの昆虫が葉にとまってい
る。2匹のミヤマカワトンボがヒラヒラと空に舞い上がる。アリジゴクも居る。やはり芦
生は昆虫の宝庫だ。

 1時間があっという間。駐車場でお会いした2組のパーティが到着したのを良いしおに、
場所を譲って帰路につく。

 往路は自然観察モードで。コアジサイやヤマアジサイが盛り。クラマゴケやスギゴケ。
イワウチワの群落がある。春の花時にブナノキ峠に登った当時を思い出した。廃線跡の水
溜まりにもイモリが居たのには驚いた。

 小ヨモギ作業所の前のケヤキの林は白樺を思わせる雰囲気。マムシグサはもう青い実を
つけている。ここでしばらく小休止である。

小ヨモギ作業小屋前の白樺を思わせるケヤキ林

赤碕谷の木橋。往路では足元に注意がいっていて気づかなかったが、仲々いい雰囲気の明
るい谷であった。鹿が遊んでいれば申し分なしだが、そうは旨くはいきません。(笑)

 最奥の民家まで戻った時である。早苗のそよぐ田圃の畦の木に白い物がぶら下がってい
る。何だろう?果物の実に復路を被せてあるのだろうか。果たして、近づいてみると梅の
木になんとモリアオガエルの卵塊。夥しい量で枝がしなうほどだ。その為、卵塊の下は水
ではなく田の畦である。孵化したオタマジャクシ、きっと面食らうに違いない。

梅の木に沢山ぶら下がるモリアオガエルの卵塊

入口の鉄橋に戻ってくると、1BOXが停まっていて、トロッコの台車に布団一式を乗
せた家族連れ。どうやら最奥の民家の人達らしい。山奥の暮らしは想像以上に大変である。

 駐車場の前に京北警察署の注意書きがあるのに気づく。去る6/19に62歳の男性が
行方不明になったとのこと。何処かで足を滑らせて転落したのだろうか。単独行では最も
忌むべきことである。ここは携帯も通じない場所だ。

 帰りは最近恒例、山とセットの温泉。最寄りの、といっても車で40分以上かかるのだ
が、日吉町のスプリングス日吉に寄り、汗を流すことに。

 いつも混んでいるのだが、今日は案外早く10分程で入場できたのはラッキー。鉄分の
多い露天風呂は丁度好い湯加減であった。

 出張を控えるもぐさんとは、残念ながらここでお別れ。当方は売店を冷やかしたりしな
がら、もう少し汗の引くのを待った後、往路とは正反対の青い空が広がる丹波路を、旨そ
うなやきもちを土産に帰途についた。

 のっけの大雨から一転、後半は天気に恵まれた梅雨真っ直中のドタオフ(土壇場オフ)。
もぐさん、有り難うございました。

【タイムチャート】
7:00自宅発
9:25〜9:30京都府青少年山の家駐車場
10:05灰野廃村跡
10:45コヨモギ作業所
11:25〜12:20カヅラ谷作業所
13:05〜13:08コヨモギ作業所
13:40灰野廃村跡
14:15京都府青少年山の家駐車場



京大芦生演習林のデータ
芦生の森憧憬〜京大演習林トロッコ道』をご覧下さい

その他、『貴公子花紀行〜翠巒の芦生トロッコ道
    『ブナノキ峠〜芦生の森にも遅い春
の山行記があります。
【参考】エアリアマップ 山と高原地図『京都北山2』



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