涼味満点、赤目四十八滝散策

平成13年 8月18日(土)
天候: 曇りのち晴れ
同行: 単独
赤目五瀑の一つで最も優美な滝の布引滝


 今年は例年にも増して残暑が厳しい。となれば沢歩きだが、本格的なものにはちょっと
二の足。で、今日は避暑をかねてお手軽滝巡り。少しは涼しく感じて頂ければ幸いである。

 例の如く、名阪国道針IC。R365から県道を室生方面に出て、R165を東進する。
標識に従って右折、近鉄のガードをくぐって道なりに進む。キャンプ場を過ぎ左にカーブ
した突き当たりが赤目の有料駐車場。(H13/8現在、800円)

 駐車場の係員に渇水状況を尋ねる。「ちょくちょく、上流で降っているのであんまり影
響はない」とのこと。少し安心。折角来たのに水が無くてはねぇ。

 茶店に寄って、料金を払う代わりに冷たい茶と案内図をもらう。

 赤目はご多分に漏れず、役行者が修業した場所だといい、近くの延壽院には不動明王が
祀られている。土産物屋や旅館が建ち並ぶ道を歩いていくと、2階建ての日本サンショウ
ウオセンターの建物。ここで入山料300円を支払う。サンショウウオセンターには多く
の種類のサンショウウオが飼育されていたが、以前、能勢の深山で見つけた体長6p位の
イモリに似た動物も、当時は分からなかったものの、今から思えばサンショウウオの一種
だったに違いない。

 ざっとサンショウウオの展示水槽を見物して、いよいよ渓谷の遊歩道へ。やはり期待に
違わぬ涼しさである。陽射しもここまでは迫ってこない。駐車場で32℃を示していた手
元の温度計は28℃に低下。この後、渓谷を辿る内に、最低時には25℃迄低下した。

 右に滝川の渓谷を見て進んでいくと最初の滝「行者滝」と「霊蛇滝」。そして橋を渡っ
て、赤目五瀑の一つ「不動滝」。15mはあろうか、なかなか堂々とした滝で、アクアマ
リン色した深い釜にはカワムツが群れている。

不動滝。釜の水が綺麗です

 乙女滝、名もないなめ滝、屏風岩を眺めて進む。しかし岩盤につけられた遊歩道は濡れ
て滑り易い。
八畳岩付近から千手茶屋

 八畳岩を過ぎ、千手茶屋の奧に観瀑台がある。岩にせかれた水が糸を引くように網状に
流れ落ちるのが「千手滝」。記念切手の図柄になった滝である。

 ここで再び橋を渡って弘法大師護摩の窟へ寄り道。小さな洞穴一面に一円玉が張り付け
られているのが面白い。この後、岩につけられた道を登る。

流れが枝分かれし、千手観音の手を思わせる千手滝

 続いて現れるのが赤目四十八滝のハイライト、布引滝(表題写真)。柱状節理の天狗柱
岩とコントラストをなす滝の正面へは橋を渡る。落差約20m。岩に掘られた溝を、水は
白く音もなく滑り落ちる。名前の如く白布を垂らしたような優美な滝だ。釜を渡って涼風
が顔を撫でた。団体さんが登り切るのを待って、橋から戻って右の岩壁につけられた道を
登る。滝の上部は「竜ヶ壷」といわれる青々とした淵。

 パラパラと小さな星形のピンクの花が落ちているのに気づく。一度気づくと濡れた岩陰
のあちこちに群生しているのが分かる。特徴のある大きな葉。イワタバコだ。花は残念な
がら盛りを過ぎていたが、咲き遅れたのがチラホラ。早速撮影しておく。

 「陰陽滝」は岩の隙間を滑り落ちる滝の釜から大きな岩が顔を出している。これが陽物
を連想するところから命名されたのだろうか。そういえばなんとなく、そんな感じのする
滝ではある。

 暫く歩いて百畳岩と呼ばれる大きな岩盤。その向こうの百畳茶屋で缶ビールを売ってい
たので、思わず飛びつく。店の周囲は人が多いので、更に上流に向かい、昼食に適当な場
所を探す。

 「七色岩」は豆腐の様な四角形の大岩。長老ヶ岳の七色の木と同様に、種々の木や草が
生えているので名付けられたのであろう。

 次に現れる雨降滝は最近の日照りによる渇水で、水滴が岩盤を濡らすのみ。残念ながら
シャワーを浴びることは出来なかった。

 蕾をつけたウバユリが1本たつ所を過ぎて、大きな岩盤がうずくまる辺りに出る。骸骨
滝と不気味な名前の表示がある。しかし名前のような陰鬱な感じはない。折良く先客も居
なかったので、ここで昼食タイムとした。

 水音が心地良い。食後のコーヒーを飲んでいると、タテハチョウが寄ってきて帽子に止
まる。トンボも石の上で羽を休めているが、逃げようとしない。昆虫も山では都会のよう
にこすからくない。

 40分程の大休止。更に奥へ向かう事にする。ここまで来ると、歩く人もようやく少な
くなる。

「荷担滝」は流れが岩で大きく二分された滝。その姿が荷物を振り分けている様に見える
ので、その名が付いたという。 

岩にせかれて水が振り分けられた荷担滝

 小さな琴滝の上流に、これも五滝の一つの琵琶滝。

 ササが茂りだし、岩の道は林道然とした地道となって、左に案内板が現れると、すぐに
赤目四十八滝の最奥の滝の「岩窟滝」が目に入る。高さ10m程の滝である。カメラと三
脚を抱えたおじさん達がここにも陣取っている。河原では水遊びで涼をとっているグルー
プも。こちらは涼しげな滝の音を聞きながら、ツガの木の下で一服する。

赤目四十八滝の最奧の滝の岩窟滝

 この岩窟滝からは更に今井林道を横切り、香落渓へ抜けるハイキングコースがある。少
し辿ってみる。良く踏まれた道が滝を巻いて左にカーブしていく。と、右手に池がある。
エアリアマップによると人工池だそうだ。道は沢を右に左に跨ぎながら、植林と雑木の混
ざった中を緩やかに延びていく。香落渓にもう1台車を置いておけば手頃なコースになり
そうだ。

 適当な所で引き返す。先程の案内板の所まで戻った時、タオルがないのに気づく。「あ
りゃ?また落としたかな」と思ったら、前方の木の枝に白い物が懸かっている。近づくと
自分のタオルだ。誰かが拾ってくれたのか。それにしてもこのタオル、何か意志を持って
いるような。(^^;

 来た道を戻る。渓谷の出口を抜けるとまたムーッとした熱気が襲ってくる。この熱気で
再び現実の世界へ戻った事を知るといえば一寸大袈裟だろうか。充足感と寂しさが入り交
じる一瞬。

 ゆらゆらと歩いていく。幾つかの店を物色している間に、凍らせたお茶のペットボトル
を売る店を発見。これは嬉しかった。

 駐車場は直射日光で暑いので少し移動し、道路沿いにあるキャンプ場横の木陰に車を停
めて着替える。ツクツクボウシが鳴いている。季節の中で最も名残惜しさを感じる夏から
秋への移ろいである。

 帰途は久しぶりに香落渓経由で帰ることにし、途中、青蓮寺湖畔の香落渓温泉に寄って
行くことを思い立つ。その感想は「いで湯の落し文」であらためて。

 残暑の中、涼味満点の赤目四十八滝散策でした。少しは涼しさをお裾分け出来たでしょ
うか?


【タイムチャート】
8:45自宅発
10:30〜10:35有料駐車場
10:40日本サンショウウオセンター
10:56不動滝
11:10千手茶屋
11:15千手滝
11:20〜11:22布引滝
11:40陰陽滝
11:50〜11:52百畳茶屋
12:00〜12:40骸骨滝(昼食)
12:50荷担滝
13:00琵琶滝
13:10〜13:30岩窟滝
13:44琵琶滝
14:12百畳茶屋
14:25陰陽滝
14:40千手茶屋
14:55日本サンショウウオセンター



赤目四十八滝のデータ
【所在地】 三重県名張市・奈良県宇陀郡室生村
【標高】  240m〜460m
【備考】  室生火山帯から発する滝川の上流、赤目渓谷に懸かる連
      瀑の総称です。周辺は室生赤目青山国定公園に指定され、
      最初の行者滝から最奧の岩窟滝まで約4kmに渡って大
      小の滝が続き、それらを結ぶ遊歩道が整備されています。
      また、岩窟滝から香落渓へ抜ける事も可能です。尚、入
      口の日本サンショウウオセンターで協力金300円が徴
      収されます。(^_-) 近鉄大阪線名張、赤目口駅から三重
      交通バスがあります。
【参考】  エアリアマップ 山と高原地図『赤目倶留尊高原』



   トップページに戻る

inserted by FC2 system